ホッキョクウサギ日誌

なかにしけふこのブログ。宗教学と詩歌文藝評論と音楽と舞台と展示の話など。

カウンターテナー研究会御礼

12月15日、カウンターテナー研究会第8回例会でレクチャーの機会をいただきました。
「『古代末期』の教会で『歌った』のは誰か?」というテーマで、先行研究とローマ帝国におけるキリスト教の公認以前からポスト・ローマ期にかけての事例を紹介しつつ、初期キリスト教における「歌」と「歌う人」のプレゼンスについてお話しました。

重点的に紹介した先行研究はこの2冊です。
James McKinnon, ed., Music in Early Christian Literature. Cambridge UK: Cambridge UP, 1987
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Christopher Page, The Christian West and its Singers: The First Thousand Years, New Haven: Yale University Press, 2010
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ローマ帝国におけるキリスト教の公認以前以後の教会における詩篇唱の実践・継承と、キリスト教以前から存在する諸宗教の音楽実践や音楽観の取捨選択、そして教会による専門歌手の養成に至る過程のお話です。
今回お声がけいただいた話題は、修士課程から博士課程初期のころにかけていつか詳しく調べてみたいと思っていたテーマでした。当時は典礼学の分厚い壁の前にただただ立ち止まってしまい、しばらく塩蔵せざるをえなかったことを思い出します。
この話題がここで生きるとは思ってもみませんでした。人生に捨てるものなし。

たいへんご好評いただき、また新たな発見もいただきました。
ユダヤ教の音楽との関わりやハルモニア音楽論の継承のみならず、器楽を伴う「秘儀」の音楽との相克はやはり重要なポイントですが、詩篇唱の正当化と詩篇解釈、礼拝と人々とモノの関わりなどさまざまな視角から「初期キリスト教」と同時代の人々にとっての「歌」と「祈り」の意義も深く観察できそうです。
歌う宗教学宗教史学徒ならではの今後の研究に生かしてまいります。
ありがとうございました。