ホッキョクウサギ日誌

なかにしけふこのブログ。宗教学と詩歌文藝評論と音楽と舞台と展示の話など。

翻訳書を上梓します(エドワード・J・ワッツ、中西恭子訳『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』(白水社、2021年))

このたび白水社から翻訳書を上梓いたします
エドワード・J・ワッツ『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』
中西恭子訳、白水社、2021年
著者、エドワード・J・ワッツ氏はカリフォルニア大学サンタバーバラ校教授、現在最も精力的に活動する古代末期地中海世界史研究者のひとりです。
『ヒュパティア』は、政界や宗教界の要人を輩出する名教師として知られつつも5世紀初頭のアレクサンドリアの政争に巻き込まれて非業の死を遂げた女性数学者・新プラトン主義者ヒュパティアの生涯と、同時代の宗教者と知識人の命運を明晰な分析とともに描き出す著作です。
古代末期のアレクサンドリアの状況を俯瞰する視点にはじまり、古代末期のアテナイアレクサンドリアの学芸文化や、380年代から410年代のアレクサンドリアの諸宗教と政治の相克に加え、ヒュパティアの学問の背景にある3世紀から6世紀の数学史や新プラトン主義史も伝える好著です。
古代末期から現代に至るヒュパティアの受容史を語る章も圧巻です。
アレハンドロ・アメナーバル監督作品『アレクサンドリア』(『アゴラ』)のヒロインの実像を知りたいみなさまもぜひ。
ジェンダースタディーズの点でもフェアなアプローチの作品で、このたび日本語に翻訳して紹介する機会をいただき、とても光栄です。

白水社ウェブサイトに書誌が出ました。
ラファエロアテナイの学堂》の「ヒュパティア像」とされる人物像をもちいたFragment兎影館・柳川貴代さまによる装幀も美しい。
青緑のかげが地中海の波濤を想起させます。
ほんとうにすてきにつくってくださって嬉しいです。訳者冥利です。ありがとうございます。

www.hakusuisha.co.jp


Amazon紀伊國屋書店・hontoで予約ができるようになりました。
出荷日は11月10日とのことです(Amazonでは11月13日発売になっています)。
みなさまどうぞよろしくお願い申し上げます。