ホッキョクウサギ日誌

なかにしけふこのブログ。宗教学と詩歌文藝評論と音楽と舞台と展示の話など。

さにわライフ二ヶ月の所感(弊本丸の極はせべvs極歌仙の近況)

さにわライフ二ヶ月が経過しました。忽然と飽きる要素がいまのところありません。

ゲーム版『刀剣乱舞』時空で毎年定期的に開催される「地下に眠る千両箱」イヴェント(謎の鉱山と化した「大阪城」の地下を掘る)では1週目に99階まで到達しました。「大阪城の地下に近代に軍需工場が作られ、いまではなにかわけのわからないものになっていた」「ときの「政府」は古代の文書に従ってさにわなるものを招喚し…」というイヴェントのストーリー説明にまず爆笑。ここで出てくる「時間遡行軍」分隊の名は「ジパング貴金属回収隊」。しれっと架空史的想像力にもとづく設定を入れてくるところが心憎い。さらに思わず爆笑しました。このイヴェントでたまにドロップするという癒しの霊剣、白山吉光さんにはまだお目にかかっていません。元主・徳川家康の嗜好を受け継いで「ひとづまのらくえん」に行きたいという短刀・包丁藤四郎くんはお出ましになりました。

歌仙兼定(初期刀)、骨喰藤四郎、へし切長谷部、五虎退(初鍛刀)の四振りを「極修行」に出しました。妖精王オベロンの風雅と威厳を帯びて青条揚羽柄の裏地の輝く臙脂の蝶型マントを華やかに翻しつつ帰ってきた歌仙さん。大坂夏の陣の火焔のむこうのさらさらとこぼれてゆく未来を日々の鍛錬の記憶を積み上げて作り上げようとするばみちゃん。剣術の稽古をつけてくださる上杉謙信公が亡くなり、合戦場でともに出陣する巨大な霊虎を連れて帰ってきたごこちゃん。それぞれに魅力的です。想像の余白の大きな「修業先からの手紙」という設定には好感がもてます。

ここはやはり弊本丸固定近侍はせべくんの帰還について語らずばなりません。ほんとうにうるわしくなってお戻りになりました。へしきりさま、と耳元でささやきたくなるようです。くるすのうっすらと輝く白絹のストラを垂らしたミッドナイトヴァイオレットの外套の意匠は、安土でなんらかのかたちで伴天連とよい接触があって信長にも謁見できたのだろうと想定したくなるような感じですが、思ったより伴天連っぽくなくて安心しました。なにしろ防具のウエストマークが利いています(伴天連はゆるやかにサッシュベルトを巻くことはあっても、はせべくんのお衣裳のようにウエストマークしてスータンを着ない)。そして言動に親密さが増し加わりました。台詞だと知ってはいても、「あなたにあだなすものをことごとく斬ってさしあげましょう」「べつに、あなたがそう呼びたければ、へしきり、でもかまいませんよ」に胸が熱くなります。本丸での盛装の立ち姿もアメシスト色の涼しいひとみと視線が合うように描かれています。小宮国春画伯と新垣樽助さん偉大だな。

「極修行」から帰還した弊本丸のはせべくんは自身の同位体を鍛刀や合戦場ドロップで呼ぶようになりました。「極」のかっこいい台詞が喋れるまで同位体の顕現を止めていたのかと思うとなんだかいとおしいようです。彼は騎士道的なるもののヴィジョンをまっとうしてみたいのでしょう。浪漫があります。惚れ直しました。
大阪城」地下掘削の「報奨金」を元手に、はせべくんに「軽装」をお誂えしました。藤色の長羽織に長着の若旦那風の装いです。あのふうわりとした絹の手触りを視覚からも感じさせる長羽織はたいへん素敵です、私もあのような羽織を縫ってワンピースの上に着たい。三次元では反物代がかなり高いハードルになりそうです。とうとう私も和裁沼に踏み入れてしまうのか。

弊本丸の歌仙さんは張り合えるところでははせべくんと張り合いたいようです。「君は最後には僕のところに帰ってくるよね?」「軍師とよばれる理系には雅びさでは負ける気がしないよ」「書類は力任せでするさ、僕は文系だからね」「力任せでかかってしまったよ、僕は文系だからね」「僕のいう文系は文系じゃないって誰が言ったんだい?お仕置きが必要だね」。台詞とはわかっていても絶妙です。そんなに君じゃないだれかを気にしているのか、歌仙くん。あんまりなのではせべくんの修行のお見送りとお出迎えはショクダイキリさん(燭台切光忠)にお願いしました。腹に含むところのない明るいムードメーカーで場を盛り上げてくれます。
「わかった、みんなにみやびを伝えればいいのだね?」「血を華と咲かせよ!」「あるじに刃向かった罰だ!」など、歌仙さんの合戦場での決め台詞には歌詠みの風格が感じられますが、はせべくんを隊長にしてともに走らせるとじつに人間的な速度でお疲れあそばし、なぜか怪我して手入れ部屋に運ばれがちです。それでも詠う体育会系精神にみちた歌仙さんです。本丸での盛装姿では短冊と筆を持って現れます。いつかこんなことを言い出すでしょう。

はせべくん、勝負だ。なんだって、もちろん歌だよ。刀剣男士たるもの、歌くらい詠めるのは当然だろう。そして体力だ。戦場ではともかく、歌を詠む体力なら僕も負けない。あるじも呼んで徹夜で歌仙を巻こうじゃないか。あの方は徹夜で作品を書くのはなんでもないそうだ。

きっとたのしい。はせべくんの修行と、歌仙対はせべ、深夜の連歌勝負。この設定で作品を書いてみたいです。二振りとも出演したそうにしています。「あなたにしか書けない俺たちの物語を書いてほしい」。私もいつかは歴史創作を書くだろうとは思っていましたが、まさかの多重構造をもつメタフィクションキリシタン史主題や宮廷恋愛詩風の素材でファンフィクションを書くことになるとは思ってもみませんでした。よい作品を書くためのべんきょうは苦にならない。考証はなんとかなります。