現代詩手帖6月号『月に吠えらんねえ』特集に寄稿しました。
清家雪子さん作のまんが『月に吠えらんねえ』の主題は日本近代詩歌と戦争。1945年8月15日から後の時空に行けない「近代市□街」に閉じ込められた詩人たちの物語です。
各作家の人となりと作品世界・教育史も含めた受容史から喚起されるイメージをぎゅっと凝縮した擬人像むれなす群像劇の傑作です。21世紀の女性作家にとっては異文化でもある旧制高校教養文化への批評の物語としても興味深く読めます。考証たしかでイメージの飛翔も豊か、若い人たちにとっての文学への問いと広義の古典の入り口になるイラストレイテッド・ノヴェルのなかでは出色の作品だと思います。
文豪をイラストレイテッド・ノヴェルで描くには絵がいのちです。映画的な構図とともに東洋の成人男性の肉体をリアリティをこめて美しく描けるってすばらしい。
今回の特集では清家雪子さんの書き下ろし8頁と昨年の前橋文学館での萩原朔美さんとの対談も再録されています。
特集への寄稿者それぞれの意気込みと愛にあふれる一冊で、こんなにアツい現代詩手帖はなかなかありません。
人物紹介だけでも執筆陣のなみなみならぬ気合を感じます。
萩原朔太郎研究会のみなさまの深い洞察に貫かれてたのしそうでしかも勉強になる座談会と藤井貞和先生のオリグチズムあふれるあたたかなエールに胸打たれます。
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私は登場人物紹介を一部担当しています。
犀(室生犀星)
カフェJUNマスター(西脇順三郎)
車掌さん・ケンジ(宮澤賢治)
釈先生(釈迢空=折口信夫)
はるみくん(折口春洋(旧姓藤井))
龍くん(芥川龍之介)
カワバタくん(川端康成)
たっちゃん(堀辰雄)
近代ゴリラ(三島由紀夫)
ヤナギタ先生(柳田國男)
西脇先生、賢治先生、釈先生に春洋さんに柳田先生、犀星先生、いずれも詩的恩義のある方々ばかり。芥川龍之介、川端康成、堀辰雄、三島由紀夫のお四方は偉大な先輩です。
清家さん、釈先生とはるみくんをすこぶる素敵に描いてくださってほんとうにありがとうございます。
芥川龍之介の文体そのものの作中世界の龍くん。BBCシャーロックのアイリーン・アドラーのことばを借りれば「頭脳明晰ってセクシー」。秀才気質と詩才のあいだで揺れるほんのりお茶目さんキャラなのがじつにいいかんじです。
追い書きは別エントリで!
『月に吠えらんねえ』には改めてしっかりと紙幅を割いて論じたい題材があふれています。宗教学者としては腕が大いに鳴ります。今後の展開がますます楽しみです。
ほんとうにたのしい仕事でした。ありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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もしかすると直接思潮社に注文されるのが早いかもしれません。みなさんぜひ読みましょう。