ホッキョクウサギ日誌

なかにしけふこのブログ。宗教学と詩歌文藝評論と音楽と舞台と展示の話など。

研究メモ作成事情

たいへんごぶさたしておりました。
春節も明けました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
ツイッターに放流した研究メモ事情の話を採録します。タイムラインの皆様と情報交換ができて嬉しかったです。世界のどこかには完璧な情報管理術を日々営々と行って素晴らしい文章を量産しているスーパー研究者スーパー著述家が輝かしく存在するのかもしれないという幻想に打ちひしがれるより、身近な声を分かち合って前へ進んでゆくこと、やはり大事です。

私の場合、研究や作品のアイディアは基本手書きです。
研究関連のメモはたまったらOneNoteにテーマ別に収録することもあります。
使用ノートはA5ツバメノート(100頁サイズ)に落ち着きました。
100頁サイズは必ずしも取扱店が多いわけではないサイズですので、30頁サイズを買ってマスキングテープで束ねて複数冊合本にして使うこともあります。
これにレモン画翠で買ったクレールフォンテーヌはがきサイズスケッチブックを併用しています。このスケッチブック、表紙の色使いとデザインが鮮やかでなかみの紙もほどよく柔らかい質感で紙色も輝かしい。使っていて快い高揚感があります。
両方とも適度な分厚さがあって立って書けるのもよい。
最近お気に入りの筆記用具はMarvyのミリペンです。黒とセピア、0.1mmと0.3mm。
硬めのペン先でしっかり書けて発色もよい。

見開きA4サイズの紙面に日付・書誌データつきで手書き、が私には合っているようです。学会・研究会でのコメントもこのノートに書き込んでいます。本や論文を読んだメモもひとまず手書きします。時系列でまとまっているとあとで見返すときにも便利、という実感をもっています。

史料読解メモ・論文構想・アウトライン作成のさいなど、もっと大きな紙を使いたいときはオキナA4プロジェクトペーパーを使っています。入手容易ですし紙の厚みと色合い、水色の罫線も好ましい。気楽に使えてよいです。ちなみにわたくし方眼派です。

ロディアブロックメモの紙質と紫の罫線が映える輝くような紙色は好きなのですが、殴り書きにはいささかもったいない。ニーモシネが文房具に一家言あるみなさまのあいだで評判になったことがありましたが、紙質よすぎて私などはかえって恐縮してしまいます。罫線の色が明るくきれいな色だったら常用したかもしれません。

リーガルパッドはより惜しみなく使えます。特にオフィスデポのリーガルパッド。通販で買えます。ためらいなくざくざく使えますね。

史料読解メモはA4プロジェクトペーパーに殴り書き→OneNoteかWordで清書のケースが増えました。史料のデータベース化は場合によります。翻訳を打ち込むだけでも大変です。

論文を書くときはまず、A4プロジェクトペーパーに構想や話の展開のアウトラインやチャートをお絵かき(殴り書きともいう)することから始めます。複雑な話題をすっきり説得的に読んでいただくにはやはりこうなりますね。

いつもお世話になっております美篶堂さん制作の各種ノートなど、装幀の美しいノートを研究帖に使っていた時期もありました。しかし、美しい装幀のノートを教義論争史のさまざまなドロドロを記したメモで汚すにはしのびない。平和で美しいことだけ書きたいノートというものが世の中にはあるのです。
詩歌のスケッチも必ずしも美しく穏やかな話題ばかりとは限らない。ここで便箋と原稿用紙の登場です。大学生協が作っているクリーム色の紙のB5判400字詰原稿用紙が好きです。縦書きで筆記用具を替えて書きます。作品がかたちになったらスケッチは捨てます。残念ながら作品のスケッチをみなとっておくほど自意識過剰な人間ではないようです。

直接本やコピーをとった(プリントアウトした)論文にメモをとって付箋を貼り、あとからメモを採録することもあります。この読み方は身体に染みこんでゆく感じがして私も好きです。
そして、メモを手で書いているとだんだん面倒くさくなって「どこになにが書いてあったか覚える」「典拠だけとにかくメモをする」を発動することも。
この方法の難点は論文に再構成するときメモを探すのが若干面倒なこと。でも、からだで読む感覚が身につくと論文に情報を再構成するときもそんなに大変ではありません。
コピーは紙ファイルに挟んで本棚へ入れています。
たまってきたらpdf化をそろそろしなくては、と思いつつだんぜん紙ファイル派です。

iPadにpdfを放り込んで持ち歩いていますがやはり手書きでメモがしたいのでついプリントしてしまいます。PDFをiPadで読むときはiBooksでない書き込みできるアプリで開いて書き込む工夫がやっぱり要りますね。やはり書き込めないのがもどかしいです。対策を模索中です。Kindleで読む電子書籍もやはりあの書き込めない感じがもどかしい。

ノート作成と文献管理は研究の一過程です。記録術と文献管理術の洗練が自己目的化するのが一番危険です。どんなに美しいノートをとっても、どんなにすっきりと文献管理を行っていても、その結果が論文や史料翻訳として結実しないのではしかたがありません。

そして資料管理・メモ整理の方法に完璧や完全はありません。そのときそのときでそれぞれに合った方法を無理のない範囲で試行錯誤して取り入れてあみだしてゆけばよいのではないでしょうか。一番らくに長く続く方法がその人に合った方法でもあります。

とくに多色遣いのきれいな講義ノートをつくって定期試験前になるとクラスメイトに回覧する習性のあったみなさん、くれぐれも卒論や修論のために見た目にも完璧な資料整理をめざそうなんてむりしないでくださいね…きれいなレイアウトの紙面を作るその能力はほかの場面で生かされますから!