ホッキョクウサギ日誌

古代末期地中海世界の宗教史、宗教学、詩と短歌と文藝評論とその周辺をめぐるよもやまばなし。

いかにして彼女は洗脳から生還したか-「しくじり先生スペシャル」辺見マリ回

宗教学の同僚のあいだで話題になっていた「しくじり先生スペシャル」
辺見マリ回をみました。
(2015年9月14日放送、テレビ朝日系列)
「拝み屋」のマインドコントロールからの脱出と社会復帰までのエピソードです。
番組公式ウェブサイトの案内はこちら。

www.tv-asahi.co.jp

動画がありました。貼ってみます。
Part 1

youtu.be


Part 2

youtu.be



体裁はバラエティ番組ですがよいドキュメンタリ。まさに教科書通りのマインドコントロールへの埋没とそこからの脱出談。西田公昭先生も解説に入っておられます。
人生の蹉跌と危機に陥ったスターの弱った心につけこみ、マネージャーも「拝み屋」もみんなぐるになって大金を巻き上げるシステム。
「神様のためにお金をちょうだい」と多額の金銭を従順に差し出させ、その金銭の行き先を疑わない心を作るシステム。
「修行」と称する集団生活を送らせて炭水化物漬けの食生活をさせてわざと容貌を損ない、美しくあることがなりわいの人の自尊心と自己評価までも破壊して「拝み屋」たちの「信者」のサークルに依存させるシステム。
そのすべてがすさまじい。

「お金をすててきれいになろう」拝み屋が引用した中山みきの言葉ですが、同じようなことを砂漠の師父も言っていた。
ぞっとしました。
宗教やスピとお金や生活に必要な富、そして生活における満足の諸相の問題は、宗教家もスピリチュアリストも研究者も目を背けずしっかり考えなければならない問題です。

辺見マリの社会復帰のきっかけを作ったのは、なんと拝み屋がさらに彼女からカネを巻き上げるために発した「働いて稼いでこい」の一言だったとか。

女優業・歌手業復帰によって社会とのつながりとコミュニケーションを回復してはじめて拝み屋集団のたかりに本気で正当な怒りを表明でき、ようやく13年に及ぶマインドコントロールから逃れることができた人の、「途中で止める勇気が大事」のことばは重い。
「痩せて人生を変えたい一心でダイエット教室に通う生徒たちから納入される月謝に「自分に期待してお金をだしてくれているのだ」と胸を打たれるようになった」「家族のためを思ってかえって家族を苦しめてしまった」「社会復帰の途上で、歌っているときだけがすべてを忘れられた」と回想する芸の道に生きる人のきまじめさ純粋さも痛ましかった。

精神の自由と健康のためには、社会とのつながりとコミュニケーションの確保、支配的に振る舞う他者に対する正当な怒りの認識と表明はやはり大事だと感じるところです。

「自分は理性的な判断を下せるし、まじめにきちんと生きているから洗脳なんかされない」と思ってはいけない。
この警告は、既存の大宗教のなかでさまざまな危うさを提示しつつ先鋭化する各種の集団への誘いに対する警告にもなるでしょう。
よいドキュメンタリでした。皆さん見ましょう。