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ホッキョクウサギ日誌

古代末期地中海世界の宗教史、宗教学、詩と短歌と文藝評論とその周辺をめぐるよもやまばなし。

リマインダー:「世界遺産 ポンペイの壁画展」

みなさんこんにちは(こんばんは)。
ポンペイの壁画展のリマインダーをどうぞ。
東京、名古屋、兵庫、山口、福岡と巡回します。

「日伊国交樹立150周年記念 世界遺産 ポンペイの壁画展」

巡回情報はこちらを拝見しました。
2016年4月29日(金・祝)-7月3日(日)森アーツセンターギャラリー
2016年7月23日(土)-9月25日(日)名古屋市美術館
2016年10月15日(土)-12月25日(日)兵庫県立美術館
2017年1月21日(土)-3月26日(日)山口県立美術館
2017年4月以降、福岡へ巡回予定

東京展の特設サイトはこちらです。

東京新聞:世界遺産 ポンペイの壁画展
(東京展主催:東京新聞、TBS、森アーツセンター、後援:外務省、文化庁、イタリア文化財・文化活動・観光省、イタリア大使館イタリア文化会館、伊日財団、協賛:旭化成大日本印刷日本通運、協力:アリタリア―イタリア航空、日本貨物航空学術協力:ナポリ国立考古学博物館、ポンペイ監督局)
開館時間は10:00-20:00、入館は閉館時間の30分前まで。
4月29日から7月3日の会期中無休です。
なんとふとっぱら。
ウェブサイトにはみどころ解説もあります。
ポンペイレッドを意識した背景色のウェブデザインもゴージャスな味わいです。
まさかの六本木ヒルズの高層階で見るポンペイの壁画。展示の方法にも興味を惹かれます。みなさんぜひ。


震災後文学:いとうせいこう『想像ラジオ』(河出書房新社、2013)

津田塾でご一緒している木村朗子先生のお誘いで、3月19日に物語研究会のミニシンポジウム「災厄と物語」で登壇します。
私は宗教学徒で西洋古典学と詩歌の実作にも関わる者の立場から「橋を架ける学問と詩」について提題しますが、いまさらながら「震災後文学」の主要作品に目を通しております。

ようやくいとうせいこう『想像ラジオ』(河出書房新社・2013)を読みました。
紙版とKindle版があります。

amzn.to

amzn.to

私は荻窪に最近できた書店 Titleで文庫版を入手しました。
Titleは中央線カルチャーのよそ者や若者にも開かれた軽妙な部分と読書界のトレンドを意識した興味深い選書を行っている書店です。一見の価値はあります。

www.title-books.com


『想像ラジオ』の語り口は軽妙です。読者を選ぶかもしれません。
とはいえこの語り口で語られなければならなかったことのわかる作品です。
傑作です。
津波に襲われた被災地の樹木の上、DJになりきって魂振りする語り手。
都会的なFM放送や深夜放送の親密性を想起させる軽妙な口調に、鎮魂への思いがにじみます。
語り手は、津波の襲った生まれ故郷と実家の家族のルーツを、そして思うにまかせぬ人生を振り返り、妻子に思いをはせます。語り手のDJは心から聞き手の心に語りかける「想像ラジオ」となり、その声に魂で呼応するリスナーたちの存在が語り手を支えます。復興ボランティアのなかにもその声を聴く人がいる。
しかし、語り手には妻の声だけが聞こえない。彼は妻の不貞を疑っては疑心暗鬼にもなります。妻の声が聴きたい。息子の声が聴きたい。その願いを語る場面に哀愁と死の予感の影がさします。この場面以降の語り口の転調、そして妻と子供の声をようやく聴きとげて「放送」を終える幕切れまでのスピード感はさすがの手練れです。名作です。

『想像ラジオ』を音読すると、語りの文藝のことばを声にのせる快さを感じます。まさにたまふり文体でもあります。声に出して唱えること、語ることがたまふりにもなり、たましづめにもなる。語り手の身の上の思うにまかせぬよるべなさと話題の深刻さがあのユーモアと哀愁のにじむDJがたり文体で和らぎます。
ここはぜひシェイクスピアを得意とする俳優によるリーディング公演で聴いてみたいです。
横田栄司さんとか横田栄司さんとか横田栄司さんとかどうですか。
あの立派な台詞回しと渋いハイバリトンの声での朗読をぜひ聴いてみたい。

災厄の話題を詩歌で語るとともすると悲愴に傾いてユーモアが欠けがちになります。
特に現代詩はそうでしょう。
もしかすると日本語では語り物口調によるたまふりが悲惨すぎて笑うしかない状況を語るのに効果的なのかもしれません。そんなことも思いださせてくれる作品です。
エミール・クストリッツァが旧ユーゴのあまりに暴力的な悲惨の歴史をバルカンブラス響く寓話的世界に託して語ったことも思い出されます。

3.11以後の散文作品では、わたくし的には『想像ラジオ』と多和田葉子さんの『献灯使』が双璧です(Kindle版も出ました。リンクから行ってみてください)。
『想像ラジオ』は現代のたまふりとたましづめを軽妙な口調で語ります。
『献灯使』はもしかしてあるかもしれないけれど今は見たくないディストピア、未来の閉ざされた東京の物質的精神的衰微を生きるか弱い子供たちと死ぬに死ねない老人達たちの対比を描いて息づまるようです。
翻訳書ならだんぜんエルフリーデ・イェリネク『光のない。』を推します。
遠いところにいるからこそ、私たちの哀しみとともにそっとたたずむ悲劇を語って悼むひとがいる。Festival Tokyoで見た地点の《光のない。》の舞台とPort Bの《光のない。2》のオリエンテーリング型舞台は凍り付いた心を静かな涙とともに溶かしてくれるようでした。

やはり抒情と叙事の双方で詩的想像力に働きかけるもの、音読して声がよろこぶ文体があるもの、うすうす誰もが感じていてもあえて言語化しないできた思いもよらぬ視点を開くものがある作品が好みです。

「震災後文学」にかんして、歴史学徒・宗教学徒としては、さまざまな書き手がさまざまな証言を残してくださればテクスト分析の対象になる史料が増えて嬉しいところですが、実作者としては、ではおまえはなにをしてきたか、おまえはなにをするつもりか、と問われているような心地がします。問いに応えてこれから書こう、語ろう、と心をふるいたたせてくれる作品や批評は貴重な存在であると思います。(随時続く)

ブリテン島メシまずワールドサバイバル法:途方に暮れているあなたへ

えっ、なんだって。
SNSブリテン島の食事がまずい、と嘆いたら同胞から「お前の舌がわるい」「選んだ店が悪い」と嘲笑されたって。
ああ、薄情だねえ。それはひどい話だ。
誰もが手頃なお値段で食べられるおいしい食事への道を調べ尽くして上陸するわけではない。
やむなく外食したさきで出てきた食事にテーブル備え付けの塩胡椒をかけてもどうにもならないことだってある。
あなたが責められる筋合いじゃない。
責めるほうに屈託があるだけの話だ。

確かに塩気がない、味気ない、ものを煮る時間が長すぎる、東アジア諸国のような「安くてそこそこうまい」は存在しない、美食の沙汰はカネ次第、ただし高いお代を支払ってもうんと美味しいとは限らない、と噂のブリテン島ごはんだけれど、知られざるプチプラメシにも弁護できるところが多々あるのが底知れなさだったりもする。

おいしいもの情報を共有すればすこしでも多くの人が幸せになるのに。
かの土地のめくるめくメシまずワールドに途方に暮れている人に、武運とおいしいものの神の加護がありますように。
そう願いつつ、ホッキョクウサギ日誌のなかのひとのメシまずワールドサバイバル法をはずかしながらお伝えすべく、このエントリを書きます。



日本でもいくつかレシピ本が出ているけれど、たしかにブリテン島のお茶請けになる焼き菓子はうまい。パウンドケーキとかビスケットとかもう素晴らしい。図書館や美術館・博物館など、大学・公共施設のカフェテリアで昼食代わりにたべた一切れのパイやタルトやクリームティーは心のなぐさめだった。ふところが決してあたたかくはない寄留者の書生生活をどれだけあかるく照らしてくれただろう。

ロンドンよりは地方のほうがおいしく、イングランドよりはスコットランドのほうがおいしい。ハギスはたぶん好みが分かれるところかもしれないが、グラスゴーB&Bでたべたスコティッシュ・ブレックファーストの手間を掛けて作られたとおぼしき食事の滋味は忘れがたい。
移民向け料理店・食材店のなかにはカラフルに光り輝くものがたくさんある。
外食で困ったら中華、東南アジア料理、中東料理、インド・パキスタンバングラデシュ料理をまずはお試しあれ。
ジューイッシュデリ・ベーカリーも楽しい。
ファラフェル~。フムス~。ファラフェル~。フムス~。
そしてケバブ~。ビリヤニ~。
思わずおいしいものの呪文を唱えてしまう。

スーパーマーケットで売っているEU各国から輸入されてくる素材も悪くない。
ぜひ眼力を鍛えよう。
調査のための短期滞在なら、自炊できる宿に泊まることを皆さんにお勧めしたい。
おいしいご飯をつくれる人のところへ行ければなおよい。
AsdaやTescoあたりの安売りスーパーマーケットで素材を買っても、ものを見分ける目があればそこそこ自炊は楽しめる。
最近は成城石井あたりでもみかけるようになったDorset TeaやYorkshire Teaで皆さんご存じかもしれないけれど、普段使いのものでもお茶はおいしい。
乳製品もおいしい。
こくのある牛乳、そして素朴ながら奥行きのある乳脂肪分の香りと舌触りが味わえるチーズ。私はイギリスでおいしいミルクティーの入れ方を覚えた。
肉製品だっておいしい。Marks and SpencerやWaitroseやSainsbury'sのグローサリーにぜひ行ってみてソーセージやハムを試してほしい。


Marks and Spencer

www.marksandspencer.com

やWaitrose

www.waitrose.com


そしてSainsbury'sのTaste The Differenceシリーズのお総菜やデザートもけっこういける。

M&SやSainsbury'sのレンジで温めるお総菜やパックのサラダにはどれだけお世話になっただろう。
図書館で一日文献を狩って疲れ切ってしまうと外食なんてとても考えられなくて、宿に帰ってレンジで温めるスープとパックのサラダで夕飯はおしまい、ということも珍しくなかった。冷凍食品ですら移民料理はうまい、はほんとうだった。懐が寒くてひとりぼっちで外食する勇気がなくてもカレーがおうちで楽しめる。

調査で行った学校・公共施設の食堂でおいしいところに到達できればとてもラッキーだ。私の行った場所では、ロンドン大学Senate Houseのカフェテリアと大英図書館のLeith'sはおすすめできる。Senate House内のICS図書館のティールームにもお世話になった。スープとパンとサラダだけでも、あるいは大きめのタルトやパイひときれでもはらもちはよかった。

ファストフードでどこへ行ったらいいかわからないみなさんへ。まずフィッシュ&チップスはやはり名物なので一度はお試しあれ。
プレタマンジェ

www.pret.com

 

Upper Crustのテイクアウェイのサンドウィッチはaffordableだ。
なかみにもよるけれど、Upper Crustのバゲットサンドはそこそこいける。
あのパリッとしたバゲットの皮は心のなぐさめだった。
カフェネロの珈琲は安心して吞めた記憶がある。調度もおしゃれ。

www.caffenero.co.uk
プレタマンジェは東京にも上陸したことがあるからご存じのかたもいらっしゃるかもしれない。
そういえばエジンバラ空港ではPaulのカフェテリアが繁盛していた。
さもありなんと思った。



確かに、ブリテン島でおいしい食事に恒常的に与れる場所に到達するには機転だけではどうにもならない場面があらわれる。
カネなり人脈なりの何らかの特権的な僥倖が必要なのかもしれない、と思い知らされる場もはなくはない。
イギリスのよい食事には露骨にカネと階級の香りがすることがある。
モード雑誌の日本版で紹介されているようなポッシュなモダンブリティッシュ料理の店の食事は、たしかにそれなりのお値段だ。
新鮮で安全な素材を使ったおしゃれでヘルシーなオーガニック料理も象徴的だ。
健康と倫理と富の味がする。
為替レートがもたらす理不尽感の怨みは深い。
1ポンドは100円、1ポンドは100円、と自己暗示をかけてお買い物したり外食したりしないと、なんだか釈然としないような悔しいような思いが拭えないときもある。

アルプスの南側の国々に寄留する日本人にとってのメシまずエピソードは、それは運が悪かったね、いやもっとおいしいものあるよ、食の冒険者たれ!幸運を祈る!で克服できることも多々ある。しかし話がイギリスとアメリカに及ぶと、食事に露骨にカネとメシまず克服エピソードをめぐる自尊心にかかわる個人史に絡む要素を刺激するなにかにふれてしまうことがあって、どうにも話が紛糾することがあって悲しい。

同胞どうし助け合おうよ、と思っても、まわりにいるのが助け合いの心を分かち合えないひとばかりなら途方にくれてしまうこともあるかもしれない。機転を利かせてつぶさに調べても新参者には扉が開かないこともある。そんな土地柄がよそものを小馬鹿にしているように思えて疑心暗鬼になることさえある。

でも、あきらめないでほしい。
冒険の旅に出たつもりで、機転をきかせてささやかなおいしいものを探してみよう。
その経験はきっとあなたの人生を輝かせる大切な記憶になる。
失敗したら笑っちゃえ。無念の笑いを共有してくれるひともきっといる。

確かに私にも短期の調査のためのブリテン島滞在中に、より多くの本にふれたい、より多くの演奏会やマスタークラスに触れたい、と思って食事代を節約したことがあった。
食事への執着を断つと感覚が冴え、図書館での作業の後に通う舞台や演奏会や音楽学校のマスタークラスの感興も安い席種でもますます深まる。
そんな体験もしたことがある。
宿に帰ればビスケットと紙パックのスープでばたんきゅう、だったけれど心は幸福だった。文士は食わねど高楊枝、短期滞在の期間ならば修行だと思って耐えられたのかもしれない。風通しのよい学問と芸術の体験と引き替えに安くて美味しい食の体験をムーサイへの供犠に献げたのかもしれなかった。

とはいえそんなメシまず伝説のある土地にあっても、お手頃で美味しい食事に到達した努力と機転とセンスがほめられたらそれはうれしい。
どんどんシェアして!とばかりに喜んでおいしいものの情報を開陳してしまうだろう。

おそらくはもっとおいしいものがブリテン諸島にはあるだろう。
そして私はしばらくかの地にご無沙汰している。
来年度どこかで上陸してぜひ情報を更新したいものである。

読者のみなさんに幸運とおいしいものの神の加護がありますように。

大英博物館動画「ポンペイのパンのつくりかた」

おいしいと評判の古代ローマ料理。
試食イベントやレシピ本の翻訳も増えました。

ここで大英博物館提供のパン作り動画をご紹介します。
ジョルジョ・ロカテッリ氏による「復元レシピによるポンペイのパンの作り方」解説

youtu.be

2013年に開催された展覧会「ポンペイとヘルクラネウムの生と死」関連動画です。
レシピはこちらです。

www.britishmuseum.org

ウェスウィウス山噴火時にヘルクラネウムのあるオーブンの中に入って焼かれていたという炭化したパンを分析したレシピをポンペイ・ナポリ・スタビアエ考古学監督局が提供しています。
(© Soprintendenza Speciale per i Beni Archeologici di Napoli e Pompei)

レシピを翻訳して引用します。

biga acida (=サワードウ) 400g
イースト 12g
グルテン 18g
塩 24g
水 532g
スペルト小麦粉 405g
全粒粉 405g

粉で土手を作る。
水を土手のなかに注ぎ、イーストを入れて混ぜる。
土手を崩し、粉と混ぜる。
グルテンと水を加えて2分ほど混ぜる。
塩を加え、3分ほど混ぜる。
円盤状にに成型し、1時間寝かせる。
寝かせたのち、焼成時に型崩れしないようにたこ糸で水平に縛る。
焼成時にふくらみやすいように水平面に切れ目を入れる。
オーブンを200度に設定。
30分から45分焼く。

サワードウ・ブレッドの模様です。おいしそうなのでぜひ作ってみたいですね。

展覧会「ポンペイとヘルクラネウムの生と死」

www.britishmuseum.org


は、映画にもなりました。東京では東京都写真美術館で過去に上映されたそうです。

www.britishmuseum.org

筆記用具の話

文献を読むときのメモは鉛筆(Bか2B)、ノート+構想を書くときはMarvyのドローイング用ミリペン(0.1mmと0.3mm、黒とセピア)、ときどき気分を変えるためにステッドラー・トリプラスファインライナー(モーヴ、スモーキーブルーなど)。発色良く筆先細くかりっとした書き味が必要なのでこの選択になりました。

鉛筆にはほどよい軟らかさを求めます。20代前半まではF使ってましたがいまは発色と書き味を優先しています。

サラサグリップ0.28mmブルーと青緑あたりも好きです。にじまないゲルインクボールペンの流れるような書き味。色がきれいで思考も弾みます。


万年筆は詩歌の構想とPCで打つ前の清書(縦書き)で使います。ラミーサファリケルトン細字にコンバーターを使って色雫紫陽花色を入れています。確かにラミーの万年筆の筆先は乾きやすく、扱いには要注意です。パイロット万年筆の極細のペン先のしなやかで流麗な書き味も好きです。アルファベットを書くなら海外メーカー製品、日本語を書くなら断然国産です。

筆記用具はお茶の水レモン画翠か丸善文房具部、または東大生協本郷第一購買部で見ることが多くなりました。ボールペン・ゲルインクボールペンなど高機能の新製品を見るなら東大生協本郷第一購買部が楽しい。お茶の水レモン画翠と丸善文房具部は魅惑の筆記用具が誘う魔窟です。丸善文房具部にはA5ツバメノート100枚サイズもあります。

なお、良いお道具を使ったからといってよい作品が書けるわけではないことはいうまでもありません。




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研究メモ作成事情

たいへんごぶさたしておりました。
春節も明けました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
ツイッターに放流した研究メモ事情の話を採録します。タイムラインの皆様と情報交換ができて嬉しかったです。世界のどこかには完璧な情報管理術を日々営々と行って素晴らしい文章を量産しているスーパー研究者スーパー著述家が輝かしく存在するのかもしれないという幻想に打ちひしがれるより、身近な声を分かち合って前へ進んでゆくこと、やはり大事です。

私の場合、研究や作品のアイディアは基本手書きです。
研究関連のメモはたまったらOneNoteにテーマ別に収録することもあります。
使用ノートはA5ツバメノート(100頁サイズ)に落ち着きました。
100頁サイズは必ずしも取扱店が多いわけではないサイズですので、30頁サイズを買ってマスキングテープで束ねて複数冊合本にして使うこともあります。
これにレモン画翠で買ったクレールフォンテーヌはがきサイズスケッチブックを併用しています。このスケッチブック、表紙の色使いとデザインが鮮やかでなかみの紙もほどよく柔らかい質感で紙色も輝かしい。使っていて快い高揚感があります。
両方とも適度な分厚さがあって立って書けるのもよい。
最近お気に入りの筆記用具はMarvyのミリペンです。黒とセピア、0.1mmと0.3mm。
硬めのペン先でしっかり書けて発色もよい。

見開きA4サイズの紙面に日付・書誌データつきで手書き、が私には合っているようです。学会・研究会でのコメントもこのノートに書き込んでいます。本や論文を読んだメモもひとまず手書きします。時系列でまとまっているとあとで見返すときにも便利、という実感をもっています。

史料読解メモ・論文構想・アウトライン作成のさいなど、もっと大きな紙を使いたいときはオキナA4プロジェクトペーパーを使っています。入手容易ですし紙の厚みと色合い、水色の罫線も好ましい。気楽に使えてよいです。ちなみにわたくし方眼派です。

ロディアブロックメモの紙質と紫の罫線が映える輝くような紙色は好きなのですが、殴り書きにはいささかもったいない。ニーモシネが文房具に一家言あるみなさまのあいだで評判になったことがありましたが、紙質よすぎて私などはかえって恐縮してしまいます。罫線の色が明るくきれいな色だったら常用したかもしれません。

リーガルパッドはより惜しみなく使えます。特にオフィスデポのリーガルパッド。通販で買えます。ためらいなくざくざく使えますね。

史料読解メモはA4プロジェクトペーパーに殴り書き→OneNoteかWordで清書のケースが増えました。史料のデータベース化は場合によります。翻訳を打ち込むだけでも大変です。

論文を書くときはまず、A4プロジェクトペーパーに構想や話の展開のアウトラインやチャートをお絵かき(殴り書きともいう)することから始めます。複雑な話題をすっきり説得的に読んでいただくにはやはりこうなりますね。

いつもお世話になっております美篶堂さん制作の各種ノートなど、装幀の美しいノートを研究帖に使っていた時期もありました。しかし、美しい装幀のノートを教義論争史のさまざまなドロドロを記したメモで汚すにはしのびない。平和で美しいことだけ書きたいノートというものが世の中にはあるのです。
詩歌のスケッチも必ずしも美しく穏やかな話題ばかりとは限らない。ここで便箋と原稿用紙の登場です。大学生協が作っているクリーム色の紙のB5判400字詰原稿用紙が好きです。縦書きで筆記用具を替えて書きます。作品がかたちになったらスケッチは捨てます。残念ながら作品のスケッチをみなとっておくほど自意識過剰な人間ではないようです。

直接本やコピーをとった(プリントアウトした)論文にメモをとって付箋を貼り、あとからメモを採録することもあります。この読み方は身体に染みこんでゆく感じがして私も好きです。
そして、メモを手で書いているとだんだん面倒くさくなって「どこになにが書いてあったか覚える」「典拠だけとにかくメモをする」を発動することも。
この方法の難点は論文に再構成するときメモを探すのが若干面倒なこと。でも、からだで読む感覚が身につくと論文に情報を再構成するときもそんなに大変ではありません。
コピーは紙ファイルに挟んで本棚へ入れています。
たまってきたらpdf化をそろそろしなくては、と思いつつだんぜん紙ファイル派です。

iPadにpdfを放り込んで持ち歩いていますがやはり手書きでメモがしたいのでついプリントしてしまいます。PDFをiPadで読むときはiBooksでない書き込みできるアプリで開いて書き込む工夫がやっぱり要りますね。やはり書き込めないのがもどかしいです。対策を模索中です。Kindleで読む電子書籍もやはりあの書き込めない感じがもどかしい。

ノート作成と文献管理は研究の一過程です。記録術と文献管理術の洗練が自己目的化するのが一番危険です。どんなに美しいノートをとっても、どんなにすっきりと文献管理を行っていても、その結果が論文や史料翻訳として結実しないのではしかたがありません。

そして資料管理・メモ整理の方法に完璧や完全はありません。そのときそのときでそれぞれに合った方法を無理のない範囲で試行錯誤して取り入れてあみだしてゆけばよいのではないでしょうか。一番らくに長く続く方法がその人に合った方法でもあります。

とくに多色遣いのきれいな講義ノートをつくって定期試験前になるとクラスメイトに回覧する習性のあったみなさん、くれぐれも卒論や修論のために見た目にも完璧な資料整理をめざそうなんてむりしないでくださいね…きれいなレイアウトの紙面を作るその能力はほかの場面で生かされますから!

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告知拾遺:ボッティチェリ展にアウグスティヌスとヒエロニムスも上陸、本づくり学校会員募集、「ウサギノネドコの世界」

告知拾遺です。

ボッティチェリ展(東京都美術館・2016.1.16ー4.3)

日伊国交樹立150周年記念 ボッティチェリ展(東京都美術館・2016.1.16ー4.3)が開催されます。

ウェブサイトはこちら。

botticelli.jp

ツイッターアカウントもあります。(@Botticelli2016)

古代末期クラスタ的には岩波文庫版のアウグスティヌス『神の国』(服部英次郎訳)の表紙や、現行の中公文庫版『告白』(山田晶訳)第一巻の表紙でおなじみの《書斎の聖アウグスティヌス》の実物がみられるのが楽しみですね。
《聖ヒエロニムスの聖体拝領》も出展されます。


主要出展作品紹介はこちらでごらんください。
シモネッタ(《美しきシモネッタの肖像》)もいますね!

http://botticelli.jp/works


現行の岩波文庫版『神の国』の表紙はこちらでごらんください。

Amazon.co.jp: 神の国 1 (岩波文庫 青 805-3): アウグスティヌス, 服部 英次郎: 本


現行の中公文庫版『告白』の表紙はこちらでごらんください。

告白 I (中公文庫) | アウグスティヌス, 山田晶 | 本 | Amazon.co.jp

告白Ⅰ|文庫|中央公論新社

本づくり協会会員募集

本づくり協会が個人会員・法人会員(一口3000円から)を募集しています。

ワークショップ参加など、各種特典あり。

「本づくり協会は、活版印刷や手製本などの本づくりにかかわる技術と文化の継承を目的とした任意団体です。」(ウェブサイトより)。
美篶堂と嘉瑞工房も関わっています。

www.honzukuri.org

 

「ウサギノネドコの世界」

京都の博物カフェ「ウサギノネドコ」

usaginonedoko.net
のグッズ展「ウサギノネドコの世界」が10/19まで六本木・新国立美術館SFTギャラリーで開催中です。

http://usaginonedoko.net/info/?id=35

カフェの案内はこちら。西大路ですね。

usaginonedoko.net